専門家の話

 さて前項の件で、35年以上銀行員を務めてきた専門家の畏友W君が海外出張の後にもかかわらずメールをくれました。それをアレンジする形でレポートします。
 1930年代の日米の物価を比較した一橋大学の報告。フォークナーが活躍した頃の1934年から36までの統計です。これによれば、為替レートは1ドルが3円33銭。
 日本とアメリカの物価を比べると、日本はアメリカの0.54倍、つまりアメリカは日本の物価の倍くらいということです。したがって、為替レートは1:3.3ですが、本当の実力(購買力、即ち、同じものを買うときに必要な円とドルの金額の比率)は1ドルが1.7円くらいとなる計算です。
 一方、日本の当時のお米の価格は10Kgで2円38銭、タバコ一箱は15銭、地下鉄初乗り10銭、映画一本は30銭でした。このため、当時の1円は今の1000円くらいにはなるでしょう。
 当時の為替相場だと1ドルが3.3円ですからフォークナーの週給2000ドルは6600円、それが1000倍となると660万円になります。しかし、ドルの本当の実力は1ドルが1.7円ですから、生活実感としては、 2000×1.7×1000=340万円となります。なお当時のアメリカの物価は、タバコが13セント、NY地下鉄初乗り5セント、映画は29セントになっていました(これだけ見ると1ドルが1円みたいです)。

 さすがにW君は詳しく教えてくれて当時の日米の物価の違い、為替レートというオフィシャルな貨幣価値と購買力という現実的な力との違いもよくわかりました。
 それに追加すると、どうも週給を4倍して月給に、そしてそれを12倍して年収に換算する事が違うのでは思います。月給が基本の日本とは違い、週給を報酬のベースに考えるのでしょうか。1週間という単位はキリスト教に根ざすものではないかと愚考します。
 それと脚本家の週給はサラリーマンのそれとは違い、毎月、毎年ではなく、次の週には首を切られるという本当に不安定なものだったようです。1週間から数週間で終わる臨時的な雇用形態の報酬のベースが週給でもあるように推測します。つまりそのような不安定な雇用形態では相対的に報酬は高くなりますよね。そんな風に考えてみました。