才人の業績

 松山に若き日を過ごした伊丹十三の記念館を訪れる。正岡子規や秋山兄弟ではないところが味噌というか、天の邪鬼というか。それに伊丹十三ってあまり好きではない。声が聞きずらい。賢しらな態度がすこし気に障る。
 でも10代の終わりから『ヨーロッパ退屈日記』などは好んで読んでいたし、『遠くへ行きたい』で見せるジャーナリスティックな手腕、山口瞳のエッセイに出てくる魅力的な家族など、興味もありました。
 それと記念館を設計した中村好文さんにたまたま札幌でお会いした事がある。向こうは覚えていないでしょうが、「建築家の流儀」という個人展で現在住んでいる家の設計図を見てもらい話を伺った。
 記念館は中庭の空間が素敵でした。アメリカの美術館には必ずと言っていいほど中庭があり、それまで見た絵画の印象を反芻しながら寛ぐ空間として機能しています。ここでタンポポ・コーヒーを飲みました。
 確かに伊丹十三はある種のルネッサンス人てきな多彩な才能の持ち主ですね。前述のエッセイでも自筆イラストが癖がありながら面白い。映画監督でも絵コンテを駆使し、映像のイメージが頭の中にできあがっているんでしょうね。映画は女性を性的に貶めるようなシーンが複数の映画にあったり、テーマがあまりにもジャーナリスティックに面白過ぎたりする点が、認めがたいですけれど。
 大江健三郎が友人である伊丹十三の妹さんと結婚した事はすでに有名ですよね。