Singing Summertime

英語文化演習でSam Cookの"Change Is Gonna Come"を訳し、聴く(そして観る)。この曲は1964年公民権運動真っ盛りの時代の歌で、オバマ大統領の選挙でも"Change"というスローガンの元になった事でも知られている。歌詞ははとてもシンプルだが、サム・クックの歌唱がいい。声に伸びがあり、歌い方はスムースで無理がない。つまり変に個性を主張するような節回しがない。例えばたまたま同じ時に聞いた"People Get Ready"(Curtis Mayfield)をカバーするAlicia Keysのように装飾音を多用する歌い方では、歌のメッセージを伝えるよりも歌い手の自己主張が前景化する。
 サム・クックの癖のない歌い方が、若い時には物足りなかった。リトル・リチャードやジェームズ・ブラウンのようにあまり黒くなかったからだろう。でも年をとった?今はこの歌い方が好ましく聞こえるようになった。しかも授業中にたまたま見た「サマータイム」での素晴らしさ。この曲は黒人のみの出演によるフォーク・オペラ"Porgy & Bess"の中の代表的な曲です。のMJQやエラとルイのデュエット,マイルスなどジャズでも名演奏が多く、ロックではジャニスの絶唱が有名です。
 サム・クックのSummertimeは真っすぐ聴き手の心に届くような歌唱でした。歌手が歌を伝えるメッセンジャーに徹した時に、逆に歌手の存在が歌の背後からせり上がって来るような瞬間があって、正にそれでしたね。