学生の言葉づかい

 4月はじめの事。ゼミ志望のための研究室訪問では僕のシラバスを読んでアメリカ文化に関心のある学生がくるので、「アメリカ文化の何に関心があるの?」という質問をした。するとある学生から「映画?」という答えが返ってきたのでした。僕が質問したのに質問が返ってきたので戸惑って聞き返すと、また「映画?」と繰り返す。
 少しして「私は映画に関心があるのですが、この答えでいいですか?」という意味である事を理解した。「映画です」と言えば済むのに。このような単語だけでの会話は言葉を学び始めた幼児や外国人の場合にはあり得る。でも教員による面接のような場面でこの言葉づかいは明らかに非常識。
 単語から文節または文へと進んでいく言葉を学ぶプロセスからすると如何にも幼稚な気がする。また単語だけで会話をしようとすると、微妙なイントネーション、それを理解してくれる仲間、コンテキストなど多くの言葉をとりまく要素を必要とするので、却って難しいような気もする。
 もっと重要なのは仲間内で通用する言葉使いが別な場面では失礼に当たるとか、理解されないという想像力が欠けている事。
 その学生は、僕が耳が悪いか(それもあります)か、気難しいと思ったのか、僕のゼミを志望してきませんでした。