テニュアを巡る悲(喜)劇

 先週の採点中に新聞でアリゾナ大学でのテニュア(終身在任権)を決める審査で落ちた45歳の女性准教授が審査に関わった3人を射殺した事件があった。この事件では日米の違いその他が思い当たる。
 まずテニュア。これラテン語のtenir(英語で言えばhold、保持する)が語源で、tenant(借家人、不動産のの権利を一時的に保持する人)や tennis(ボールを受け取る人?)もそう。この終身在任権というのは、日本では専任教員に採用された時に自動的に保証される。准教授から教授へ昇格する時には『文学部唯野教授』でスラップスティックに描かれたような悲喜劇が生まれるのかも知れないけれど。
 しかしアメリカでは専任採用自体が試用期間のようなもので、数年でテニュアを取得しないとその大学にはいられないような制度になっている。そのような小さな悲劇はあちこちであるのでしょうが、それがアメリカでは職場内での銃のトラブルに発展する。
 "Publish or perish"と言われるように、論文を発表しないと学会から退場せざるを得ない、今度は発表した業績が評価されないと大学にいられない。日本のようなぬるま湯的な大学と比べると、大学や学会で生き延びるための関門がいくつもあって大変そうだ。