スミス都へ行く

スミス都へ行く』(1939)を見る。研究費で購入したフランク・キャプラの9枚入りのDVDボックスの中の1作。ジェームズ・ステュアート主演で、ジーン・アーサー共演(『シェーン』(1953)で有名。その時は50歳を超えていた事を今回初めて知った)。
 キャプラの監督で一番知られているのは『或る夜の出来事』だろうか。今回初見の『スミス都へ行く』は急死した上院議員の後継として、ボーイスカウトの指導者だったスミスが御しやすいという事で選ばれてしまう。地方からワシントンに乗り込んだスミスは、地元の政治ボスが知事や議員を牛耳っている事を知り、そのボスの言いなりになっている上院議員とも敢然と戦う。この議員は、スミスの亡き父の友人で彼の尊敬する人物だった。
 このスミスのナイーブさはアメリカ人の評価するイノセンスとも関係するような気がする。スミスが少年のために計画していたキャンプ場が、ダムの建設予定地という汚職の問題は極めて現代的というか、いつまでも変わらない利権の構図というか。
 ボーイ・スカウトという組織に少しだけ関心があります。おそらくフロンティアが消滅した19世紀終わりから都市人口が人口の半分以上になる20世紀初頭に始まった、子どもたちを自然に親しませるというコンセプトの団体がボーイ・スカウトだろうと思います。その原型はイギリスにあったのかも知れないけれど。ここでの青少年を良導するという理念は、ヒトラー・ユーゲントのように、軍隊予備軍として国家に奉仕する少年たちの育成という装置に変貌していった時代もあったようだ。
 31歳の若いジェームズ・ステュアートがナイーブで理想主義に燃えるジェファーソン・スミスを熱く演じる。上手くはないが悪くない。またキャプラの演出も力が漲っていて2時間の長尺(当時としては)を飽きさせない。ラストの時間引き延ばし作戦は少し間延びしてしまうけれど。またこのような正義感と理想主義が最後には認められるという作りのナイーブさに鼻白む向きもあるだろう。フランク・キャプラは本当にそう信じていたようだ。『オペラ・ハット』でも同じような主張をしているので。