Brother's Keeper

 この「兄弟の面倒を見る人」という概念は、もちろん聖書のカインとアベルの関係を表した言葉だが、ジョイスの弟スタニスロスによる『兄の番人』が英文学では有名。身近な視点で兄の家族関係・友人などをつまびらかにし、初期作品の成立事情についても詳しく書き連ねている。
 もちろんカインとアベルの物語を下敷きにした『エデンの東』は映画ファンならずとも知っていると思う。またゴッホにつくした弟のテオの事を連想するかも知れない。
 ジョン・ワイドマンという黒人作家との自分と弟(公民権運動に参加したのち犯罪に身を染めた)のBrothers and Keepers(翻訳『兄弟―刑務所の内と外で』晶文社、1988)や、ニューオリンズのバンドNeville BorthersのアルバムBrother's Keeperもある。後者は黒人コミュニティの同胞の事を指しているが。
 人気のテレビシリーズ『プリズン・ブレイク』も同様の作りだが、今回直接的にはロバート・B・パーカーの『ガンマンの伝説』(早川書房、2001)を読んで兄弟の絆が物語の重要な要素だと思った。ワイアット・アープは兄のジェームズとヴァージル、弟のモーガンとウォーレンと協力しながら、ガンマン、カウボーイ、保安官を続ける。その関係はそれぞれの妻や恋人よりも強く深い。
 しかしながら家族の血縁関係よりも自分で作り上げた人間関係の方が重要だと僕は考える。でもそれって家族の関係が希薄な環境で育ったせいなのかも知れない。
アープ本人の写真もあるのだけれど、やっぱりヘンリー・フォンダのポーチで寛ぐ写真がいんですよね。