西部小説というジャンル

 昨日読み終えたのが、ロバート・B・パーカーの『アパルーサの決闘』。スペンサー・シリーズで有名なパーカーがワイアット・アープを取り上げた『がんマンの伝説』を経て、オリジナルなキャラクターとストーリーを作りだした。とは言いながら、主人公のヴァージル・コールとエヴァレット・フィッチの関係は、スペンサーとホークの関係を髣髴とさせる。悪く言えば焼き直し。厳密に言えば、正義とか男らしさというモラルを問い続ける主人公とその対話相手になる同格の相棒という構造です。
 このジャンル、西部劇ほど日本では論じられていない。J・F・クーパーとのつながりで論じられたOwen WisterのThe Virginian(1902)くらいだろうか。
 でもアメリカでは結構古いジャンルです。西部小説も、ハードボイルド小説で有名な『ブラック・マスク』誌のようなダイム・ノベルから始まるようです。19世紀後半。代表的な作家はゼーン・グレイやルイス・ラムーア。アメリカン人なら誰でも知っているビッグ・ネームです。代表作『ユタの流れ者』(グレイ)、『争いの谷』(ラムーア)は1980年代ペーパーバック・ウエスタンとして中央公論社から翻訳が出ている。
 一般に有名なのはジャック・シェーファーの『シェーン』。1943年に発表され、1953年年に映画化、翻訳は1953年。僕は1歳の時に出されたこのハヤカワ・ミステリをネットで購入していま手元にあります。シェーファーにはリー・マーヴィンジャック・パランス主演の開拓期終焉の老カウボーイを描いたMonte Walshもあります。
 駆け足で流れをまとめると、1960年代にはネイチャー・ライティングで有名なエドワード・アビーのThe Brave Cowboyがカーク・ダグラス主演で『脱獄』として映画化。ここでは自動車が出てくる時代の時代遅れのカウボーイが登場。
 1970年代には,イーストウッド主演・監督で映画になった『アウトロー』はフォレスト・カーターのJosey Walesです。
 1980年代にはラリー・マクマートリーの Lonesome DoveがTVシリーズにもなって有名なようです。
 1990年代には西部劇が最後の光芒を見せますが、フィクションについてはもう多分後ほど。
 今読んでいるJosey Walesのジャケットの元南軍兵士ジョージーの狂気を感じさせる目元が素敵だ。