戦争文学の系譜

 アメリカ文学に限ると、南北戦争を描いた古典スティーブン・クレインの『赤い武功章』(1989)に始まり、映画『国民の創生』(1914)の原作となったトーマス・ディクソンの『クランズ・マン』(1904)なども広義では含まれるか。たぶん『風とともに去りぬ』を思い浮かべる人も、『コールド・マウンテン』を連想する人もいるかも知れない。
 第1次世界大戦ではヘミングウェイの『武器よさらば』(1929)以外にあまり思いつかない。『誰がために鐘は鳴る』(1940)はスペイン戦争だしね。映画になった『ジョニーは戦場へ行った』(1971)は監督のダルトン・トランボが1939年に執筆した小説が原作らしい。ハリウッドの赤狩りで追放中だったトランボが『ローマの休日』の脚本を友人の名前を借りて書いた事が今では知られている。
 第2次大戦ではジョン・ホーン・バーンズの『画廊』(1947)、ノーマン・メーラーの『裸者と死者』(1948)、アーウィン・ショーの『若き獅子たち』(1948)、ジョン・ホークスの『人食い』(1949)、ジョン・ハーシー『壁』(1950)、ハーマン・ウォークの『ケイン号の叛乱』(1951)、ジェームズ・ジョーンズの『地上より永遠へ』(1951)と『シン・レッド・ライン』(1962)、ジョゼフ・ヘラーの『キャッチ22』(1961)、カート・ヴォネガットの『スローターハウス5』(1969)、トマス・ピンチョンの『重力の虹』(1973)がある。
 なぜか朝鮮戦争を取り上げた作品は少なく、リチャード・フッカーの『マッシュ』くらいか。
 そしてヴェトナム戦争については、マイケル・ハーの『ディスパッチズ』(1968)、ジョン・サックの『ヴェトナム・ミステリー・ツアー」(1966)、フィリップ・カプートの『戦争の噂』(1977)がノンフィクション。マイケル・ハーは後に『地獄の黙示録』、『フルメタル・ジャケット』などヴェトナム戦争映画の有名作品の脚本を担当している。
 フィクションとしては、ロバート・ストーンの『ドッグ・ソルジャーズ』(1975)、マーティン・バークの『戦争ですよ』(1980)、そしてトバイアス・ウルフの『兵舎泥棒』(1984)と『バック・イン・ザ・ワールド』(1985)、ボビー・アン・メイソンの『イン・カントリー』(1985)。
 それと今回司会をする発表で扱う、ティム・オブライエンの諸作品という事になるだろうか。
そう言えば自分のホーム頁の映画のコーナーで戦争映画を扱っていたんだ。
http://www.jin.hokkai-s-u.ac.jp/~honjo/movies.html#war