Stop Loss 兵役延長の不条理

 偶然BSで『ストップ・ロス/戦火の逃亡者』を観た。あまりプログラムを読まずに何となくつけた映画が良ければみるという方針です。英語の勉強という口実も用意?してあるし。
 さて『クラッシュ』や『アメリカを売った男』で印象的なライアン・フィリップが除隊間際の軍曹を演じている。イラクから戻って仲間と除隊祝いの馬鹿騒ぎをしている場面から見始める。
 しかし上官に呼び出されたキング軍曹は「ストップ・ロス」という兵士不足解消のための政府の制度によって兵役が延長された事を告げられる。優秀な兵士であり分隊長であったキングは脱走をはかる。
 軍曹と言うのは『プラトーン』でも分かるように、小隊長の中尉に率いられる2つの分隊のそれぞれの指揮官は軍曹。兵士にとっては直属の上官で、戦闘の現場を熟知し、兵士の行動に直接責任をおう立場だ。
 キングは両親と会い、親友の恋人の運転で議員に相談するためにワシントンに向かう。その途中戦闘で亡くなった部下の家族にその死の説明に赴く。途中で同じように「ストップ・ロス」から逃げる黒人兵士一家の窮状を目の当たりするが、国外逃亡を援助してくれる弁護士の連絡先を教えられる。
 キングはメキシコの国境を越えようとするが、その直前に家族や故郷を捨てる事を思いとどまる。ここまでのストーリー展開や俳優の演技は悪くない。しかし最後にキングは兵役延長に応じてしまう。その肩すかしをくらったようなエンディングはハリウッド映画の典型のようにも思える。
 メキシコ国境を目の前にして悩む場面で終わってもいいのではないだろうか。キングはまた自分自身が批判する戦争に加担し、敵を殺し、時には身を守るために子供を殺す事も認めた事になってしまう。それまでの苦悩や矛盾はどうなってしまったのと思ってしまうような、無責任な終わり方だった。