Sail Away

明日はRandy Newmanの"Sail Away"を訳して・解釈して・聞いて・見る予定。
このランディ・ニューマンって歌手は、映画音楽で有名だったアルフレッド・ニューーマンの甥っ子。でもシンガー・ソングライターで地味目で、曲のメロディやルックスではなく歌詞の内容で勝負するタイプなので、日本ではあまり知られていない。
さてこの曲はCDの解説を読むと、開拓当時のアメリカへ渡ろうとしているヨーロッパ人がアフリカ人にアメリカって素晴らしいから移住しようよ、と誘っている歌に解釈している。
 これは現実には白人が黒人を奴隷として酷使してきた歴史と言う観点からは合っているようにみえるが、語り手は奴隷船の船長というのが正しい読みのようだ。もちろん黒人をアフリカから連れ出して、アメリカで奴隷にするための甘言なのだ。それは”Sail away―sail away / We will cross the mighty ocean into Charleston bay"という歌詞からも明らかだ。チャールストンアメリカ東部の奴隷市場で有名だった町だから。
 ランディ・ニューマンの強烈にアイロニーの利いた歌詞はその視点が見えないと分かりずらい。解説を書いた音楽評論家もそこでつまづいたようだ。この事はアメリカ人がこの曲について書いたものを読んで分かったので、我々が陥りやすい過ちなのだと思う。でも多くの人が読む文章は慎重に書かなくては。
 最近も40年近く講読している映画誌のコラムに過ちを見つけて雑誌にメールを書いた。これは映画『陽はまた昇る』について書いたエッセイだが、「失われた世代」について3,4か所も誤った記述があって見過ごせず、メールで指摘した。すると女性編集者はきちんと対応してくれたが、60代の男性執筆者は形だけの詫びで、ちゃんと自分の間違いを認めず逃げてしまった。
 残念ながら映画評論家と音楽評論家には、ただ映画や音楽が好きで物書きになっている人が多い。