Only Yesterday

 「オンリー・イエスタディ」はカーペンターズの曲ではなく、1920年代論の古典です。金曜の演習でF・L・アレンの『オンリー・イエスタディ』を読む予定。と言っても『グレート・ギャッツビー』の時と同じで出しだけ。これは1931年に書いたもので本当に20年代が終わった直後の著作でアレンも後から批判や訂正はあるだろうけれど、歴史家とは違う視点で、同時代の読者が記憶していてあまりきちんと記録されていない事件を取り上げたと書いている。
 第1次世界大戦の終わり頃に参戦して、戦勝国も疲弊した時に超大国にのし上がったアメリカの1920年代。アメリカの戦争への関わり方は、フロンティアが消滅して帝国主義的拡張政策をはじめた1898年の米西戦争から一貫して途中から理由をつけて戦争を始める。
 1920年代は、The Roaring Twentiesと呼ばれた。Roaring(「吠える」)でRollingではありません。「疾風怒濤」の20年代。またはフィッツジェラルドのエッセイからJazz Ageとも言われる。現代の生活様式の元を築いた大衆文化の始まった時代。大量生産が可能になり、それを大量に流通し、大量に消費する、大衆文化とセットとなった消費文明の始まり。
 フォードによる自動車の大量生産、ラジオ・レコードなど新しいメディアの発明、女性の解放によるファッション、性のモラルの変化、禁酒法、ギャングの横行、スキャンダル・ジャーナリズム、進化論論争などなど解放と抑圧が併存する。
 自動車の大衆化による移動空間の拡大、道路の整備とオート・キャンプ、モーテルの建設によるレジャーの発生、新しいメディアの発明による音楽の普及、大統領ののラジオ談話、そして意識空間の拡大が実現する。
 そして身体観の変化としてはスポーツの普及がある。ビジネスマンに必須となったゴルフ、見るスポーツとしての野球、フットボールはプロモーターとメディアによって全国的イベントとなりアメリカ的な物語を形成しながら現在に至る。
 政治的には、共産主義国家誕生による反共主義の蔓延、サッコとバンゼっティ事件、ハーディング・スキャンダルにおける政治の腐敗。
 この時代は20世紀後半の60年代における価値観の大きな変革と並ぶ重要な時代だと思う。さてそれをどう教えるか、じゃなくてどう一緒に考えるか。