オバマ大統領の就任演説

 少し、もしくはだいぶ古い話題になってしまいましたがこれは金曜のゼミのための草稿です。このブログの50%くらいは研究・授業の準備のためのものなのですが、今回は100%そう。で、書いた後アップしないで下書きとして保存して金曜のゼミの時にオバマの演説を英語で読んだ後にゼミ生の説明のためにその場でアップするつもりです。初めての試み。
 枠組みとしては1)通時的・歴史的にとらえる(オバマ大統領の就任演説を歴代大統領の就任演説との比較)、2)オバマ大統領の他の演説との比較、3)この大統領就任演説そのもののテキストをみる、こんな風になります。
 1)は例えばケネディ大統領くらいまでは、アメリカの大統領として就任演説は派手なパフォーマンスであった。そこに建国の理念の理想の追求だけではなく、現状のリアリスティックな認識もあるとしても。政治家の演説は派手な、華麗なレトリック(表現)に彩られたものであった(らしい?)。
 それと比較するとオバマ大統領の就任演説は淡々とした、冷静な調子のものだった。
 2)2008年11月の勝利演説のドラマティックなレトリックは就任演説にはない。アメリカの大統領選挙は1年以上にも及ぶ、もの凄い時間とお金とエネルギーをかけた政治戦の結果やっと勝利を勝ち得たものである。しかも黒人や若者が押し掛けたシカゴでの演説は、アフリカ系初めての大統領候補として"Change","Yes, we can"などのキャッチーなフレーズは世界のマスコミが報道した。
 しかし就任演説は、抑えた調子で、アメリカの現状、継続中の戦争、大恐慌にも比較される不況、などを国民に再認識させ、しかし努力のよって改善できるという希望を強く訴えるものだった。
 しかもアフリカ系という人種的な事実を持ち出さないで、選挙による対立を和解に持って行く姿勢が顕著。
 この冷静で一見面白みのないようにも思える演説には。オバマ大統領の特徴である明るいプラグマティズムともいえるものが表現された。プラグマティズム自体は現状を冷静に認識する態度で、悲観的にはならないものの、明るいものの見方でもない。しかしオバマ大統領の場合は、厳しい現状認識の後に、努力すれば良くなるというオプティミスティックとも呼べる希望が含まれている。ここが重要な気がする。
 3)最後のオバマ大統領の演説のレトリック。これは現状の厳しい分析と、国民の努力のよって希望は見える、というコントラスト。そして建国の理念(独立宣言、憲法)など踏まえる、聖書の引用、など伝統的なアメリカの政治家の表現方法と同じ。しかしこの演説は聞いた時よりは、読んだ時の方が良さを感じるとする評論家の意見もある。
 とりあえず、こんなところだろうか。