時代をとらえるウェストレイク

ドナルド・E・ウェストレイクが12月31日に75歳で亡くなった。何故かAFPニュースの写真がウエストレイクじゃなくてジョン・キューザック。どこからこんな間違いが生じたのか?たぶん脚本を書いた『グリフターズ』の主役と言う事?MWA賞アメリカ探偵作家クラブ=Mystery Writers of Americaによる賞)を3度も受賞した作家なのにね。
 ミステリ・ファンだとロバート・レッドフォードが主演した『ホット・ロック』の泥棒ドートマンダーのシリーズが懐かしい。でもう一つ名前リチャード・スタークで書いたハードボイルド「悪党パーカー」を思い出す。しかも一見非情だけれど実は感傷的なハードボイルドではなく、本当に非情な悪党が主人公だ。『グリフターズ』はその路線か、ジム・トンプソンを連想させる。
 で「悪党パーカー」シリーズの1作目The Hunter(1962)は『殺しの分け前 ポイト・ブラック』(1967) として映画化される。パーカー(この映画ではウォーカー)のリー・マービンが女性をも殴る暴力的な主人公。ジョン・ブアマン監督の時に前衛的な映像に目がくらくらする。1999年の再映画化『ペイバック』ではメル・ギブソンがパーカー役(この映画ではポーター)をハード&ユーモラスに演じる。
 さらに『ジャガー』の映画化Made in U.S.A(1967年)はジャン=リュック・ゴダール監督で歌手の小坂恭子も出演した珍品。1973年はロバート・デュバルが仲間と組織にたてつく一匹オオカミを演じた犯罪映画の佳品だった『組織』(The Outfit)。監督はベトナム帰還兵を描いた佳作『ローリング・サンダー』のジョン・フリン。こんな風にたくさん映画化されるという事はは60年代後半から70年代にかけてウェストレイク=スタークは時代の雰囲気をとらえていたのだろう。
 そして『斧』(The Ax、1997年)や『鉤』(The Hook、2000年)というブラック・ユーモアをまぶしたノワールを読んでみると、ウェストレイクって迎合しないで時代とシンクロした作家なのだとあらためて思う。ここでは笑顔がチャーミングな本人の写真を掲載。