Dancing in the Dark

 昨年の6月にCyd Charisse(シド・チャリース)が86歳で亡くなる。優雅でかつセクシーなダンサーでSingin' in the Rain(1952)とBandwagon(1953)で記憶される。
 『雨に唄えば』(スタンリー・ドーネンジーン・ケリーの共同監督)の方は、MGMミュージカルの代表的な作品で、かつ映画がトーキーに突入した時の撮影所を舞台としたバック・ステージ物、映画に関する映画と言う意味でメタ映画でもある。この映画を見ていなくてもタイトルやジーン・ケリーの雨の中で踊る場面を見た人は多いだろう。個人的には主人公のカップルのジーン・ケリーデビー・レイノルズよりもBroadway Melody Balletのシーンでのバンプ(この言葉自体が死語だろうか、妖婦かな)役のシド・チャリースの妖艶?な緑のドレスとゴージャスな脚線美が思い出される。
 『バンドワゴン』(ヴィンセント・ミネリ監督)では落ち目のミュージカル・スターを演じるフレッド・アステアと。体育会系のきびきびとしたダンス・スタイルのジーン・ケリーよりは、柔らかでゆったりとしたアステアの方が、クラシック・バレーの素養のある彼女の踊りを生かせるように思う。こちらの方は淡い色のブラウスとスカートで優雅に踊る。アステアとステップを踏みながら、ゆっくりと踊りに入って行く場面は、モダン・ダンスのデジタルな動きにはない、時間が優美に広がっていくような印象を持つ。アステアと1957年に『絹の靴下』で再び競演する絹の靴下』ではグレイのニットのワンピースがボディ・コンシャスで印象的。しかし長身で長い脚を生かした彼女と踊りはもう少しハンサムで大きな男性ダンサーとのデュエットを見たかったような気もする。『絹の靴下』自体は1939年の『ニノチカ』(エルンスト・ルビッチ監督)というグレタ・ガルボ主演のソ連を批判した映画のリメイク。
 写真は『バンドワゴン』での"Dancing in the Dark"のお互いに様子を見ながらダンスを始めるシーン。