逝きし世の面影
これは失われた世界・時代への郷愁という事になるでしょうか。『逝きし世の面影』が昨年読んで以来、心に残っている。著者の渡辺京二さんは在野の研究者らしいが、江戸末期から明治初期の日本に来た欧米人が見た日本人(農民など庶民)の、貧しいけれど満ち足りた生活が描かれている。
親の子供への優しさ(甘やかしとは違う)、部外者への丁寧な態度、決して洗練されているわけではない、裕福でもない、しかしお互いに対して細やかに気を使いながら楽しく暮らしている様子などがもう今の日本には見られない、失われた美徳のように思える。実はその当時の日本にも本当にそんな生き方があったのとも思えるが、複数の外国人が似たような記録をしてる。
失ったと言う事は一度はあったものだから、また回復するのは不可能ではない。でも自己顕示の強い無知な政治家、子供を甘やかす大人、我儘な若者たち。「逝きし世」を取り戻すには途方もない努力が必要ですね。