オーデュボンとマルコムX

いま伊坂幸太郎の『オーデュボンの祈り』を読んでいますが、とりあえずジョン・オーデュボンについて。
ニューヨークのマンハッタン北部ワシントンハイツ地区のブロードウェイと165丁目の角にオーデュボン・ボールルームと言うダンスホール兼催物会場がありました。ここはマルコムXが1965年2月演説中に暗殺された場所として有名で、現在ではコロンビア大学の施設のとなり、その一部が「マルコムXおよびベティ・シャバズ博士記念・教育センター」として提供されているようです。シャバズ女史はマルコムの未亡人です。ワシントンハイツにはメトロポリタン美術館の別館「クロイスターズ」もあって、修道院(cloister)を模した中世様式の建物に中世ヨーロッパ美術が展示されていました。当時メトロポリタン美術館の会員になっていたので、ここも無料だったと記憶していますが。
さてJohn Audubon,(1785- 1851年)は世界最大規模の鳥類保護団体といわれているオーデュボン協会で知られているかも知れませんが、それ以前にアメリカの鳥を今でいうスーパー・リアリズムの手法で描いた画集『アメリカの鳥類』(Birds of America, 1838年)が有名です。市井の博物学者・鳥類研究者そして写真代わりに記録している内に画家になってしまったのがオーデュボンでした。7歳くらいから絵は描いていたようですが。実は明治初期の教育用に使われた錦絵で「米国の禽学者オードゥボンは多年、描き貯めた禽鳥の粉本をねずみに傷められたが、刻苦勉励し、再び禽鳥を捕らえて模写し、以前にもまして立派な禽鳥図鑑をつくった」という美談が紹介されています。
 なぜかオーデュボンのJohn James Audubon: Writings and Drawings ( The Library of America, 1999, $40) が手元にあって、1000頁に少し足りないくらいの分厚い本です。そこには『オーデュボンの祈り』でも重要な存在として登場してくる「リョコウバト」(Passenger Pigeon)について8頁ほどの記述と2枚の絵がありました。
写真はクロイスターの庭園で。