クーパーの執筆の動機と評価

ジェームズ・フェニモア・クーパーは19世紀アメリカの最も人気のある作家で、その作品では、特にThe Pioneers とThe Pilotが有名。でもなぜ富裕な地主のクーパーが30歳から61才で亡くなるまでに、30数編の小説と旅行記や社会評論などの膨大な著作を残したかについては明快に説明するのは難しい。父親のような旺盛な事業欲があった訳ではないが、親の遺産を食いつぶすようなダメな息子と言う事でもない。確かにかつ建国の理念である共和政が国内外で脅かされる社会情勢だったのと、地主としての地位も小作農民の地代不払い運動などもあって安泰ではなかったようです。それらも含めて、やはり書かずにはいられないと言う内的欲求があったと考える方が妥当でしょう。
 クーパーの文学的評価はアメリカ原住民を作品の重要な登場人物に取り上げた最初の有名な作家とされますが、原住民と開拓者との関係についてはあまり書き込まれていないと言う批判もある。ビクトル・ユーゴーからは代表的なロマンス物語の作家と評価されているけれど、自国のマーク・トウェインからは"Fenimore Cooper's Literary Offenses" (1895)において、擬古典的なクリシェとして酷評されています。また時代は下ってレズリー・フィードラーからも長いけれど、つまらない物語と評されていて。しかし、現代の観点からみると、作家の生きた時代の制約はありますが、建国期のアメリカの神話的な骨太の物語と解釈できます。確かに個人の内面の描写と言うのはないけれど、絵画的な自然描写と当時の社会問題も絡めて、個性的な登場人物が生きいきと行動する物語としては面白いと思います。