不可解な問い

ブッカ―賞を受賞したリチャード・フラナガンの事を「北米文化論」で話題にしようと。去年はノーベル文学賞を受賞したアリス・マンローを取り上げた。カナダとオーストラリアの作家なので、ちょうど「英文学」って何かという説明に使えます。ま英語圏の文学と簡単に言えますが、最近のアメリカ発の非英語圏の若手作家の英語による小説は、去年の3月3日に「アメリカ文学の行方」と題して、少し語ったような。
 で『奥の細道』で受賞したフラナガンの以前の作品The Sound of One Hand Clappingというタイトルについて。これはもちろん有名な公案(または禅問答)「隻手の声」の事ですね。江戸中期の臨済宗中興の祖と言われる白隠が創案した代表的な公案らしいです。「隻手声あり、その声を聞け」 というのは両手を打ち合わせると音がするけれど、片手ではどんな音がしたのか報告しなさい、という例によって不可解な問い。「はい、それは音のない音でした」が正解と言われるが、正解はないとも言えないだろうか。最近は「ヨブ記」のような不可解な試練も含めて「不可解」に反応するような気がします。まとめて考えてみたいとも。この「隻手の声」はサリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』のエピグラフにも使われています。The Sound of One Hand Clappingを画像で検索してみると、平手で相手を叩く漫画が数点ありました。なるほどそういう回答もあり得る訳だけど…。