Round Reading Roomの思い出

 ストランドにあるキングス・カレッジに通いつつ、そこから歩いて1キロちょっとの所にある大英博物館の図書室(British Museum Reading Room)にもけっこう行っていました。後から、中央閲覧室として使われていたのは1997年までで、図書室機能は近くのセント・パンクラスに移動したので、ちょうど最後の年に通ったんです。一応申請をしてリーディング・カードと言う入室許可証をもらいました。
この閲覧室はご存知のようにドーム型の天井をした円形の部屋で、曲面をした外壁に沿って開架図書の書架が設けられ、中央にこれも円形のレファランス・カウンターがあった(と思います)。現在では大英博物館の屋根付き中庭となっており、閲覧室のドーム棟だけが残されているようです。
1997年までの大英図書館図書室は、利用できるのは許可を得た研究者だけでしたが、実際にはかなり広い範囲の利用者も利用を許されていて、ディケンズ、ワイルド、キプリングなどの作家も使っていました。イギリス人だけでなく、マルクスレーニン、そしてガンジーなどもが通った事は有名です。特にマルクスは、30年以上のロンドン在住の時に毎日のように通って『資本論』もここで書き上げたようです。
日本人では、福澤諭吉が訪れ、南方熊楠が働き、夏目漱石が通った事も有名です。福澤諭吉江戸幕府の遣欧使節団に随行した時に訪れて『西洋事情』で近代的図書館の制度を紹介しました。いちおう許可証を見せて入室するので、一般の観光客と一緒に大英博物館に入って、ここから先は研究者だけが利用できるんだという、倒錯した?特権的な気分でいた事も記憶しています。