獅子文六について

 忙しいと言いながら、また忙しい時につい緊急の件とは別な方向に気が行ってしまうのは、子供時代からの癖ですが、これって誰もが持つ逃避思考なのかもしれません。
 僕の場合は、逃避方向がミステリーと食べ物関係のエッセイです。前者についてはまだマイケル・コナリーのペーパーを読んでいます。ボッシュ・シリーズの兄弟関係あるジャック・マカボイという新聞記者を主人公とする2作目。
 後者が吉田健一獅子文六檀一雄丸谷才一開高健池波正太郎等の作家のほか、映画評論家の荻昌弘、俳優の金子信男、エッセイイストの玉村豊男などによる食べ物エッセイ。知らないうちに本棚2段くらいになっていて、読む本には困らない。実際には困りますが。
 その中で獅子文六を再発見しました。吉田健一丸谷才一にある高踏的な文学臭が少ないのがいいです。読んでいるうちに、パリで知り合って日本に連れてきた奥さんは、森茉莉のエッセイに出てくる日本人留学生にフランス語を教える女性と同一人物であったり、岩田豊男として岸田国士久保田万太郎と一緒に文学座の創設に関わったり、などを知ったり思い出したりしました。有名な文学座の分裂で杉村春子と疎遠になったり。
 それで彼の評伝『獅子文六の二つの昭和』もアマゾンで購入。父親が豊前中津藩出身で福沢諭吉の後輩、役人を辞した後横浜に輸入商品のお店を開いたらしいです。さらに文六が育った家はその前に有島一家が住んでいて里見紝が生まれた家らしい。里見紝はお兄さんほど有名ではないですが、有島武郎、生馬兄弟の弟です。関連して有島武郎の息子で有名な俳優の森雅之の事を思い出しました。彼は札幌の白石区でうまれ3歳くらいまでいたらしいです。母を病気で亡くし、父有島武郎は心中で死んでしまった後は叔父の生馬に育てられたらしい。僕が映画やテレビで見始めた時はすでに老優でしたが、その彫の深い風貌や知的な佇まいは只者ではない事を伝えるものでした。しかしその虚無的ともいける表情は幼い時の体験から来ているのかも知れません。面白いのは彼の娘が中島葵で父親とは別のジャンルの女優としてある意味で一世を少し風靡しました。
 大森に引っ越した文六の少年時代に、隣にアメリカ人女性と混血の少年が住んでいて、その少年はイサム・ノグチだったようです。などなど、この項はあとで書き足そうと思いますが、そんな時間があるとは客観的には思えないのですが。