黒人探偵は少ない

 ギリシャ系作家ペレケーノスの黒人探偵デレク・ストレンジ物について考えているうちに、黒人探偵って少ない事に気が付いた。探偵に黒人って付けるのも女性探偵と同様かな。というか女性の探偵の方が多いかも知れない。
 2000年に発表されたクリス・ネルスコットの『危険な道』はメンフィスで探偵業を営むスモーキーという黒人青年が主人公。60年代を舞台にキング牧師やB・B・キングとも昔からの知り合いという設定で面白かったです。ここでは黒人探偵と白人女性のinterracialな関係も重要な要素です。
 黒人刑事ならチェスター・ハイムズのハーレム・クライム・シリーズが有名。「墓堀り」ジョーンズと「棺桶」ジョンソンのコンビです。Cotton COmes to Harlemが『ロールスロイスに銀の銃』というタイトルで、Rage in Harlemは翻訳が『イマベルの愛』、映画タイトルが『レイジ・イン・ハーレム』でした。チェスター・ハイムズはジャン・コクトーなどのフランスのインテリに評価され、リチャード・ライトボールドウィンのようにパリに住み、スペインで亡くなりました。
 有名なのがジョン・ポール原作の『夜の熱気の中で』を映画化した『夜の大捜査線』。冒頭のレイ・チャールズの歌声が印象に残ります。フィラデルフィアの黒人刑事ヴァージル・ティッブスと南部の田舎警察の署長の対立と和解がテーマの一つになる。黒人の方が言葉づかい、服装、収入、能力が上という設定。言葉について言えば、白人は黒人の男性を年齢にかかわらず"boy"と呼び半人前扱いをする。白人署長は黒人の"Virgil"という名前や"whom"という正確な言葉遣いを気取っていると笑い。人気があったのか続編ができ、タイトルは"They Call Me Mr. Tibbs"と黒人刑事の存在が認められつつあるような状況を表現している。
 映画の黒人探偵なら『黒いジャガー』、『シャフト』でしょうか。やはり黒人に探偵が少ないのは、探偵物の定番である失踪を依頼するという社会的背景がない。つまり黒人コミュニティに失踪した家族や知人の捜査を依頼をする伝統というか考えが存在しない。経済的余裕がない事も理由に挙げられるかも知れませんね。
写真はKris Nelscottの"A Dangerous Road"です。作者が黒人男性かどうか知りたくてネットの画像を探したら、なんと白人女性でした。この探偵Smokey Daltonは6作続いているようです。