ピクチャレスク・トラベル

 「英米文学」で旅について調べているうちに標題に出くわした。「ピクチャレスク・トラベル」なんて言葉があるんですね。18世紀後半このような自然の美しい風景を求めるpicturesque travelが流行したらしいけれど、で観光旅行も自然の風景の美しさをめでるという意味では同じ。
 18世紀後半このような自然の美しい風景を求めるpicturesque travelが流行。ウィリアム・ギルピンによるイングランドウェールズの風光美を自らのスケッチ画と共に伝えたピクチャレスク旅行記群により、絵になるような美しい愛でる自然美探勝の旅が流行した。これはそのすこし前に流行った上流階級の子弟の教育の総仕上げとしての「グランド・ツアー」の小型版のようなものです。グランド・ツアーはヨーロッパの特にイタリアの文化的・歴史的名所を巡る旅でしたが、イギリスにはそんな風光明媚な場所は少ないので、鄙びた風景を「ピクチャレスク」と名付けて愛でたようです。僕としてはイギリスのそんな地味な?景色が好きですけど。
 『崇高と美の観念の起源』(1757)でエドマンド・バークが唱えた「崇高」と「美」の中間に位置づけられる「ピクチャレスク」をイギリスの自然に求めた。その影響はターナー、コンスタブル等の画家、ワーズワス、コールリッジ等のロマン派詩人にも及んだようです。
 これがアメリカに行くと、壮大なむき出しの自然が確かに崇高とつながるような神秘的な景色に見えて「ハドソン・リバー派」の絵画になるんでしょうね。