セントアンナの奇跡

 バッファロー・ソルジャー師団の第92歩兵師団では地中海戦線のイタリア戦線で戦闘についた。この史実とトスカーナ地方でのナチスによるイタリア市民の虐殺をつなげた黒人兵士の物語が『セントアンナの奇跡』です。
 スパイク・リーイーストウッドの『父たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』を観て、第2次大戦で戦った黒人兵士についての映画を作りたかったのではと想像する。
 しかし映画は面白かったが、ストーリーが黒人兵士の受ける差別的待遇、虐殺からのがれた男の子との交流、イタリア人との避難生活、パルチザン、逃亡兵士と錯綜して物語のポイントが絞り切れていない。確かにそれぞれが関連していて、見ていて混乱するほど複雑ではないけれど、バッファロー・ソルジャーが主役のような狂言回しのような中途半端な描き方になっている。
 最後の少年との奇跡的な出会いも何かハリウッド映画(これは批判的に言っています)なんですね。表面的な浅いエンディング。スパイク・リーって問題意識はあるし、場面の撮り方はうまくなっているけれど、映画的な語り方は引き算もあるという事を忘れている。語り過ぎている。脚本を複数の人間が担当しているのに、これでは散漫になると監督か製作者は分からなかったのだろうか。興味深いテーマを扱っているのに少々残念です。