戦争と写真

 最新のキネ旬を眺めていると2008年のドキュメンタリー特集の中に『アブグレイブの亡霊』があった。例の「アブグレイブ刑務所における捕虜虐待事件」を取りあげた記録映画だ。その紹介の小さい写真がサブリナ・ハーマンが拷問のあげく死んだイラク兵士の死体のそばでにっこり笑い親指を突き上げている写真だ。
 キネ旬の写真は小さくてよく分からないが、ネットで同じ写真を見ると死んだ兵士の姿がより鮮明に見える。そしてサブリナの子供のような無邪気な笑顔が不気味に見えてくる。
 訓練もろくに受けずにイラクに送られた若い予備役の兵士たちは自分たちの管理能力を超えて日増しに増えていく捕虜たちにストレスを覚え、虐待に走って行く。これもまた戦争だと思う。普通の人間が普通でなくなるのは前線でなくての、戦闘現場でなくても、戦争には起きうる。虐待をしたアメリカ人兵士たちは加害者であり、被害者でもある。
 もちろんそんな写真はここでは掲載しない。