『勇気ある追跡』から『トルゥー・グリット』へ

 チャールズ・ポーティスの原作(1968)がジョン・ウエイン主演で映画化されたのが『勇気ある追跡』(1969)。今度は主役のマティ・ロス(14歳)が主役でリメイクされたのが『トルゥー・グリット』(2010)です。
 僕は『勇気ある追跡』を見た後、だいぶ経って何故か翻訳(昭和45年)を買いました。そこでは西部の歴史と、主人公の少女の行く末が少しリアルに、少しパセティックに綴られていて、映画とはだいぶ趣が違うなという印象を持ちました。マティを助ける保安官助手コグバーンの話や経歴の中に南北戦争の傷跡が色濃く見られるし、物語の最後で25年後片腕を失ったマティが訪れるワイルド・ウエスト・ショーにフランク・ジェームズやヤンガー兄弟が登場する。もちろん彼らも南軍崩れの西部のアウトロー=ヒーローで、フロンティアが消滅した後の、神話化の俗っぽいバージョンです。それがさらにハリウッドの西部劇になっていくわけです。アメリカの最初の劇映画が『大列車強盗』という一種の西部劇だった事も単なる偶然ではありません。フロンティア消滅とほぼ同時期に登場した新しいメディアである映画は、フロンティア神話化の重要な装置として利用されていきます。
 しかし今回のリメイクではそこら辺りはきちんと描かれているようです。でも監督があのコーエンですから、どんな西部劇になっているやら。