今度はボストン

 しばらくロスを舞台にしたハリー・ボッシュを読んでいましたが、今度はボストンを舞台にしたチャック・ホーガンの『流刑の街』(ヴィレッジ・ブックス)を店頭で目にして購入。イラク帰還兵の物語という設定に惹かれました。主人公は元軍人のリーダーの麻薬組織を襲撃して街を浄化する活動に誘われます。彼らは麻薬は下水に流し、金だけ奪うという、ある種の自警団的な、日本的に言えば鼠小僧のような義賊というか。でも最後にはリーダーはある麻薬組織のライバルを倒すために雇われて、主人公を利用したことが分かり、対決をするというお話でした。
 さて同じ作家の『強盗こそ、われらが宿命(さだめ)』という作品は映画『ザ・タウン』の原作です。このちょっとお粗末な翻訳タイトルの原作名はPrince of Theivesです。ボストンのチャールズ・タウンを舞台に、犯罪者仲間の若者(といっても30過ぎ)が最後の大仕事とそれにともなう破滅に向かっていく物語です。街自体も重要な役割を果たしています。つまりもともとアイルランド系移民の街が、ボストンの発展とともに高級住宅街となり、貧しい住民は自分たちの街が故郷でなくなることに怒りを持っているという、都市の発展の功罪が背景にあります。
 ボストンには3,4回ほど行ったことがあります。一人で、家内と、そして家内の両親と。ボストン・コモンや、フリーダム・トレイル、ハンコック・タワー、プルーデンシャル・センターなど一通りみました。ニューイングランド・クラム・チャウダーも。
 ボストンを舞台にしたミステリーは、まずスペンサー・シリーズですね。一時日本でも大流行し、スペンサーの料理本まででました。あとはデニス・ルへインの『ミスティック・リバー』、本当にこの名前の川があります。そしてこの『ザ・タウン』も"townee"街っ子のプライドと怒りが暴走して、終末を迎えてしまいます。そのストーリーは解説でも触れているようにデニーロとパシーノが共演した『ザ・ヒート』によく似ています。でも街とそこで共に育った幼馴染の犯罪者の愛憎が重要な要素となっている点が面白いんですが。