異形の最小化

NHKの『100分de名著』の『フランケンシュタイン』の最終回(第4回、2月放送)の録画を観ました。いつも思っていましたけれど出演者の伊集院光がとてもいい。たとえば名著について読んでいなかったかも知れないけれど、専門家の説明に対するコメントが視聴者代表を少しまたはかなり超えたレベルでの理解で、専門家も鋭いと感心するケースも。
 特に『フランケンシュタイン』は怪物または異形の登場人物なので、伊集院君は巨体の自分が遭遇してきた差別の視線についても語っていました。解説をする京大の廣野由美子さんも深い学識を背景とする落ち着いた穏やかな話しぶりでとても好感がもてました。
 さてヴィクター・フランケンシュタイン博士が創り出した怪物についての解釈は幾つもあって番組でも説明していましたが、ユング心理学の人の影の部分の象徴というのは、あまりすっきりしない。フェミニズム思想からは怪物は女性で、支配者=創造者たる男性から差別され、忌諱される存在と言う解釈、これも何だか。時代背景からはフランス革命産業革命における虐げられた人民・労働者と支配者・資本家と言う解釈。そして倫理なき科学者の暴走と言う解釈、これはまさに再生医療やクローンなどの現代的問題とオーバーラップします。
 僕は怪物が何を象徴するかよりも、異形のものへの差別が現代ではどのように現れているかについて関心があります。怪物や異人種への差別だとその構造が見えやすいのですが、日本のように比較的単一民族が多い、比較的安定した社会における差別は隠微な形で現れる。微細な差異を見つけ出して差別して行く構図が見えてくるような気がします。時には仲間を些細な理由で排除して差別して暴力をふるう。殺人や暴行で事件になる事例の背後には、些細なものから事件一歩手前のケースまで、様々なレベルの排除・差別・いじめがあるのではと想像しますが。